【読者投稿】北京の対日「二面作戦」 台湾には見覚えがある

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北京は高市早苗氏を「日本の首相」と呼ばなくなった一方で、日本の経済界には積極的に門戸を開いている。

政治的には圧力をかけ、経済的には利益を示して引き寄せる。こうした北京の二面作戦は、台湾にとって決して目新しいものではない。

9月30日、中国外務省の郭嘉昆報道官は、日本の核政策について述べた際、「高市早苗」と名前だけを呼び、「日本の首相」という肩書きを付けなかった。また、小泉進次郎防衛相についても、「日本の現職の防衛部門責任者」と呼ぶにとどめた。

中国の外交用語は、一字一句まで慎重に選ばれることで知られている。こうした呼び方の変化は小さなことのように見えても、北京が現在、高市政権に対して強硬な姿勢を取っていることを物語っている。

しかし、政治関係が冷え込む一方で、北京は日本の経済界に別の扉を開こうとしている。

9月末、日本の岩屋毅前外相は、日本国際貿易促進協会の会長として経済界の関係者を率いて訪中し、中国の王毅外相や何立峰副首相と相次いで会談した。

昨年11月、高市首相の「台湾有事」をめぐる国会答弁によって日中関係が悪化して以来、北京が高市首相と一定の距離を置く日本の政治家を、これほど高い待遇で迎えたことは、非常に興味深い。

王毅外相は高市政権に対して一歩も譲らず、台湾問題をめぐる日本側の言動を速やかに「是正」するよう求め、歴史問題も持ち出した。中国外務省は翌日も同じ立場を繰り返した。つまり、日中両国の政治関係を覆う厚い氷は、まだ解けていないのである。

その一方で、何立峰副首相は日本の経済界に対し、中国の不動産市場や消費市場、AIの将来性などを説明し、日中の経済協力を進めたいとの意向を示した。

地方自治体同士の交流再開についても、「水が流れれば自然と水路ができる」という言葉を使い、条件が整えば交流は自然に進むとの考えを示した。そこからは、交流再開への強い期待がうかがえる。

台湾問題では一歩も譲らない一方で、経済協力では笑顔で迎え入れる。北京の対日戦略は、かなりはっきりしてきた。

政治的には圧力をかけ、経済的には利益を示して引き寄せる。高市政権には強硬な態度を取っても、日本社会全体との関係まで断ち切るわけにはいかないのである。

この光景は、台湾にとって何とも見覚えのあるものだ。

北京は長年、台湾に対して、一方では軍事的な威嚇や外交的な圧力を加えながら、他方では中台間の経済交流の重要性を強調し、特定の産業や地方の関係者、野党勢力などには友好的な姿勢を示してきた。

その狙いは、必ずしも単なる「政経分離」ではない。むしろ、経済を通じて政治に働きかけ、民間の力を利用して政府に圧力をかけることにある。

政治・軍事面から圧力を加えるだけでなく、経済や民間交流という別の道も利用し、さまざまな手段を同時に進めることで、台湾内部の分断を図ろうとする意図は、もはや明らかである。

だからこそ、今日の北京が日本に対して見せている「政治は冷たく、経済は熱い」という姿勢を、台湾は他人事として見過ごしてはならない。

北京が日本政府と経済界、さらに異なる政治勢力をどのように区別し、一方では圧力をかけ、他方では手を差し伸べているのか。台湾も注意深く見守る必要がある。

北京の二面作戦は、台湾から日本へと対象が変わっても、その手法は驚くほどよく似ている。まさに、どこかで見たことのある光景である。

政治的な圧力は、必ずしも相手から直接譲歩を引き出すためだけではない。経済的な働きかけも、単に商売をするためだけとは限らない。

「ムチ」と「アメ」を使い分けながら、知らず知らずのうちに相手の内部に分断を生み、政治に影響を及ぼす力を少しずつ蓄えていくのである。

北京が本当に開こうとしているのは、単なる経済交流の扉だけではないだろう。経済という扉を通じて、政治に影響を及ぼす道を探ろうとしているのではないか。

日本が今直面しているこの試練を、台湾はすでに身をもって経験してきた。

だからこそ、台湾は一層の警戒心を持ち、内部の足並みを自ら乱し、内輪もめから深刻な事態を招くことのないよう、十分に注意しなければならない。

大田一博 寄稿

2026年10月9日