9月27日付の『日本経済新聞』は、紙面のほぼ3分の2を使って米中首脳会談を大きく報じた。大見出しは「米中『華やかな儀式』演出」、副見出しは「台湾・イラン・経済 火種くすぶる」。この二つの見出しは、世界が注目した今回の米中首脳会談をまさに言い表している。華やかではあったが、成果は限られていた。
トランプ大統領は自ら習近平国家主席を出迎え、国賓晩餐会を開いた。両首脳は茶をともにし、最後にはそろって米国立公文書館を訪れた。レッドカーペットから晩餐会、外交上の言葉から歴史をたどる行事まで、至るところで米中融和の雰囲気が演出された。
しかし、どれほど華やかな儀式を重ねても、台湾、イラン、AI、経済・貿易をめぐる両国の対立を覆い隠すことはできない。ロイター通信も、今回の首脳会談について「進展の兆しはほとんど見られなかった」と伝えている。
その中で、台湾にとって最も注目すべき問題は、やはり台湾海峡である。
習近平氏は米国に対し「台湾独立に反対する」よう求めた。従来の米国の「台湾独立を支持しない」という立場から、さらに北京側へ一歩踏み込ませようとしたのである。
しかし会談後、米国のパーデュー駐中国大使は、米国の台湾政策に「変更はない」と明言した。さらに、台湾関係法、米中三つの共同コミュニケ、六つの保証に対する米国の立場を改めて確認し、「われわれは台湾海峡の平和を望んでいる。威圧を望んでいない。そして独立を支持していない」と述べた。
つまり、北京は強く迫ったものの、ワシントンは従来の政策の一線を越えなかったのである。今回の米中首脳会談が華やかな演出の割には実質的な成果に乏しく、台湾海峡という最も敏感な火種が、今なおくすぶり続けていることを示している。
もう一つ興味深いのは、歴史をめぐる問題である。
米中の共同文書では、第二次世界大戦中、両国が「同盟国」であったことに言及している。しかし当時、中華人民共和国はまだ成立していなかった。米国と肩を並べて戦い、中国を代表していた政府は、現在台湾にある中華民国政府であった。
米中首脳会談直後、高市早苗首相はトランプ大統領から電話を受けた。その際、高市首相はトランプ氏に対し、日本と米国は「今や最も信頼し合える同盟国となっている」と強調し、日米の緊密な協力を改めて確認した。
ホワイトハウスでの国賓晩餐会にも、興味深い場面があった。
会場では、台湾の歌手テレサ・テンが歌って広く知られるようになった「月亮代表我的心(月は私の心を映している)」が流れ、軍楽隊は、香港の抗議運動でも歌われたミュージカル『レ・ミゼラブル』の「民衆の歌」と「ワン・デイ・モア」を演奏した。
さらに、米国を代表する半導体・AI企業のトップたちが晩餐会の主賓席に配置され、習近平夫妻と同じテーブルを囲んだ。その中には、いずれも台湾生まれのジェンスン・フアン氏とリサ・スー氏もおり、ひときわ目を引いた。
こうした選曲や招待客の席順に、果たして政治的な意味が込められていたのか。それはさまざまに解釈できることであり、深読みは避けるべきだろう。しかし、大きな話題を呼んだことは確かである。
そして最後に、トランプ大統領は習近平氏とともに米国立公文書館を訪れ、『独立宣言』『合衆国憲法』『権利章典』など、米国の独立と建国を象徴する歴史的文書を見学した。
この光景は、多くの外交辞令よりも象徴的だったのかもしれない。米中は握手することもできる。晩餐会を開くこともできる。ビジネスについて話し合うこともできる。しかし、両国の政治体制、価値観、そして戦略的利益の大きな違いまでが、それによって消えるわけではない。
したがって、今回の米中首脳会談は「雨降って地固まる」と言えるものではない。むしろ、雷鳴はいったん遠のいても、火種は消えていない。
華やかな儀式によって友好ムードを演出することはできても、台湾海峡、経済・貿易、安全保障をめぐる構造的な対立を一夜にして解消することはできない。
それこそが、今回の米中首脳会談が台湾と日本に残した、最も注視すべきメッセージではないだろうか。
投書人:大田一博
2026年10月7日








































